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2023年 順天堂大学医学部 化学過去問解説

2023年 順天堂大学医学部 化学過去問解説

順天堂大学医学部2023年 化学問題

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【1】第一問

以下の問題(第1問~第3問)の答えをマークシートに記しなさい。

第1問 次の各問いに答えなさい。〔解答番号 1 ~ 8 〕

問1 AとBはある元素の同位体である。Aの原子番号はZで,AとBの質量数の和は2m,中性子の数はAの方がBより2n大きい。以下の問い(a),(b)に答えなさい。

(a) Aの中性子の数を示す式はどれか。正しいものを①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① m+n-Z ② m+n ③ m-n-Z ④ 2n
⑤ m-n ⑥ m-n+Z

(b) mが29,nが1,AとBの中性子の数の和が30であるときの元素は何か。正しいものを①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 炭 素 ② 窒 素 ③ 酸 素 ④ ケイ素 ⑤ リン
⑥ 硫 黄

問2 コロイドに関する記述のうち,誤りを含むものを①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① デンプンやタンパク質は分子量が大きく,その分子1個がコロイド粒子となる。このような粒子が分散したコロイドを分散コロイドという。
② コロイド粒子の電荷と反対の電荷を持つイオンの価数が大きいほど,凝析の効果が大きい。
③ コロイド溶液に直流の電圧をかけるとコロイド粒子は自身が帯電している電荷とは反対の電極の方へ移動する。
④ コロイド粒子は光を散乱するため,コロイド溶液に強い光線を照射すると光の通路が輝いて見える。
⑤ コロイド溶液が流動性を失い固まった状態をゲルという。
⑥ 疎水コロイド粒子を取り囲み,少量の電解質を加えても凝析しにくくさせる親水コロイドを保護コロイドという。

問3 アルミニウムは希塩酸に溶けて気体Aを発生する。次の問い(a),(b)に答えなさい。

(a) (イ)~(ヘ)の気体のうち,気体Aと同じ捕集方法が適切な気体はどれか。正しいもののみをすべて含む組み合わせを①~⑥の中から一つ選びなさい。 

(イ) 酸 素 (ロ) 一酸化炭素 (ハ) 窒 素
(ニ) アンモニア (ホ) 二酸化硫黄 (ヘ) 一酸化窒素

① (イ),(ハ) ② (ロ),(ヘ)
③ (イ),(ロ),(ホ) ④ (ハ),(ニ),(ヘ)
⑤ (ロ),(ニ),(ホ),(ヘ) ⑥ (イ),(ロ),(ハ),(ヘ)

(b) 5.40gのアルミニウムを完全に溶かすのに必要な質量パーセント濃度10.0%の希塩酸は最低何gか。最も近い値を①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 7.30 ② 12.4 ③ 21.9 ④ 73.0 ⑤ 124
⑥ 219

問4 錯塩Xはアンモニア,塩化物イオン,原子量59の金属Mのイオンで構成される。2.505gのXに水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱して完全に分解し,すべてのアンモニアを気体として発生させ回収した。一方,残った溶液に希硝酸を加えて弱酸性とし,硝酸銀水溶液を充分に加えてXに含まれていた塩化物イオンをすべて4.305gの塩化銀として析出させた。回収したアンモニアは2.00×10-1mol/Lの希硫酸150mLに完全に吸収させ,2.50×10-1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定すると40.0mLを要した。次の問い(a)~(c)に答えなさい。

(a) 発生したアンモニアの物質量は何molか。最も近い値を①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 1.00×10-2 ② 2.00×10-2 ③ 3.00×10-2 ④ 4.00×10-2
⑤ 5.00×10-2 ⑥ 6.00×10-2

(b) Xに含まれる金属Mのイオンの物質量は何molか。最も近い値を①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 1.00×10-2 ② 2.00×10-2 ③ 3.00×10-2 ④ 4.00×10-2
⑤ 5.00×10-2 ⑥ 6.00×10-2

(c) Xを構成する金属Mのイオン,塩化物イオン,アンモニアの物質量比(金属Mのイオン:塩化物イオン:アンモニア)はいくつか。最も適切なものを①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 1:2:5 ② 1:2:6 ③ 1:3:5 ④ 1:3:6
⑤ 1:4:3 ⑥ 1:4:4

【1】第二問

第2問 気体の密度〔g/L〕に関する次の各問いに答えなさい。〔解答番号 1 ~ 8 〕
0.500molの四酸化二窒素のみを体積可変の密閉容器に入れて加熱した。温度上昇にともなって以下のような状態に変化するものとする。
・沸点(21℃)~140℃のとき,次の平衡が成立する。
N2O4 2NO2
・150℃~650℃のとき,四酸化二窒素は存在せず,二酸化窒素は分解され始め,次の平衡が成立する。
2NO2 2NO + O2
・650℃以上のとき,二酸化窒素は存在せず,一酸化窒素は分解され始め,次の平衡が成立する。
2NO O2 + N2
 容器内の気体の圧力は常に1.00×105Paとし,次の問い(a)~(e)に答えなさい。

問1 次の①~⑥の気体のうち,同温同圧において密度が最も小さい気体はどれか。正しいものを①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 酸 素 ② 窒 素 ③ 一酸化窒素
④ 二酸化窒素 ⑤ 四酸化二窒素 ⑥ 二酸化炭素

問2 

(a) 27℃において,四酸化二窒素の体積の20.0%が二酸化窒素となっていた。次の問い(ⅰ)~(ⅲ)に答えなさい。

(ⅰ) 容器内の気体分子の数はいくつか。最も近い値を①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 6.0×1022 ② 1.2×1023 ③ 1.8×1023 ④ 2.4×1023
⑤ 3.0×1023 ⑥ 3.6×1023

(ⅱ) 容器内の気体の密度はいくつか。最も近い値を①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 3.08 ② 3.69 ③ 4.62 ④ 6.16 ⑤ 9.24
⑥ 18.5

(ⅲ) 容器内の気体の密度は同温同圧における酸素の密度の何倍となるか。最も近い値を①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 1.44 ② 2.40 ③ 2.88 ④ 3.59 ⑤ 4.79
⑥ 7.19

(b) 67℃において,容器内の気体の密度が同温同圧における酸素の密度の1.9倍であったとすると,容器内の二酸化窒素の割合(体積パーセント)はいくつか。最も近い値を①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 16 ② 32 ③ 44 ④ 56 ⑤ 68 ⑥ 84

(c) 147℃において,容器内には四酸化二窒素が存在していなかったとすると,容器内の気体の密度は同温同圧における酸素の密度の何倍となるか。最も近い値を①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 1.44 ② 2.40 ③ 2.88 ④ 3.59 ⑤ 4.79
⑥ 7.19

(d) 397℃において,容器内の気体の密度が同温同圧における酸素の密度の1.25倍であったとすると,二酸化窒素は体積で何%分解されていることになるか。最も近い値を①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 10 ② 20 ③ 30 ④ 70 ⑤ 80 ⑥ 90

【1】第三問

第3問 次の各問いに答えなさい。〔解答番号 1 ~ 8 〕

 炭素-炭素二重結合の炭素原子にヒドロキシ基が結合している化合物の構造はエノール型と呼ばれるが一般に不安定なため,ケト型と呼ばれるカルボニル基をもつ安定な構造異性体に変化する。例えば,酢酸ビニルの酸触媒による加水分解で生成するビニルアルコール(エノール型)は,すぐにアセトアルデヒド(ケト型)に異性化する。
 分子式C9H14O2の六員環構造を有する酢酸エステルA,BおよびCを加水分解すると,いずれも異性化を伴って,AおよびBからは化合物D(ケト型)と酢酸が,Cからはフェーリング溶液を還元する化合物E(ケト型)と酢酸が得られた。また,DおよびEはそれぞれ,シクロヘキサン骨格をもつアルコールであるFおよびGを酸化することでも得られた。Fを分子内で脱水させると,化合物HとIの混合物になり,Gを分子内で脱水させると化合物Jのみが得られた。H,IおよびJはいずれも六員環構造と二重結合を両方有する分子式C7H12の炭化水素であった。B,D,FおよびHは不斉炭素原子をもち,A,C,E,G,IおよびJは不斉炭素原子をもたない。

 この一連の反応の概略図は次の通りである。図中のアルファベット右上の*(例えば,B*)は,構造中に不斉炭素原子をもつことを示す。

(図は編集上省略)

 また,構造式中で,六員環中の炭素および炭素に結合している水素は省略してある。
 なお,環状構造における不斉炭素原子の例を次の構造式中の*で示した。

問1 酢酸エチルに関する次の記述のうち,誤っているものを①~⑥の中から一つ選びなさい。 
① 中性の分子である。 ② 密度は水より大きい。
③ 有機溶媒によく溶ける。 ④ 揮発性である。
⑤ 芳香をもつ。 ⑥ エステル結合には極性がある。

問2 以下に示す酢酸エステルの加水分解産物のうち,異性化して生成する物質は何か。正しいものを①~⑥の中から一つ選びなさい。  
① 1-プロパノール ② 2-プロパノール ③ アセトアルデヒド
④ ビニルアルコール ⑤ エタノール ⑥ アセトン

問3 A,B,Cの構造式として,正しいものを①~⑨の中から一つずつ選びなさい。ただし,不斉炭素原子を示す*は省略してある。
A  3  B  4  C  5 

問4 分子式C7H12の炭化水素の構造異性体のうち,六員環構造と二重結合を両方有するものはいくつあるか。正しい数を①~⑥の中から一つ選びなさい。ただし,立体異性体は区別しないものとする。 
①  3 ② 4 ③ 5 ④ 6 ⑤ 7 ⑥ 8

問5 F,Gの構造式として,正しいものを①~⑥の中から一つずつ選びなさい。ただし,不斉炭素原子を示す*は省略してある。
F  7  G  8 

【2】

次の実験に関する各問いの答えを解答用紙に記入しなさい。

〔実験(ⅰ)〕 
 密度が0.828g/cm3のトルエン30.0mLに0.60X〔g〕の安息香酸を加えて溶解させたところ,一部溶け残りが生じていた。ここに塩基性にした過マンガン酸カリウム水溶液を充分加えて加熱し反応させたところ,安息香酸の溶け残りはすべて溶解し,かわりに(イ)黒色沈殿が生じた。また溶液は2層(上層①と下層①)に分離しており上層①は21.0mLのトルエンのみであった。下層①を回収し,塩酸を加えたところ白色沈殿が生じたので,白色沈殿が生じなくなるまで塩酸を加えた後,この沈殿を回収し乾燥させた(沈殿物Ⅰ)。

〔実験(ⅱ)〕 
 〔実験(ⅰ)〕で得られた沈殿物Ⅰに50.0mLのエタノールと5.0mLの(ロ)濃硫酸を加えて,図1の実験装置で反応させ,反応後,反応液を室温まで放冷した。放冷後,反応液に50.0mLの水と30.0mLのジエチルエーテルを加えてよくかくはんし,上層を回収した(上層②)。(ハ)上層②に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を30.0mL加えてよく混ぜ,上層③と下層②を分け,下層②に充分量の塩酸を加え生じた白色沈殿(化合物A)を回収し,乾燥させたところその質量はX〔g〕であった。上層③には無水塩化カルシウムを加え充分時間を経過させ,ろ過後,ゆっくり加熱しながらジエチルエーテルを蒸発させ分留すると化合物Bが得られ,その質量は1.5X〔g〕であった。
 実験中のトルエンの蒸発は無視し,トルエン,安息香酸の水への溶解および温度による溶液の体積変化はないものとし,分離と回収は100%とする。

問1 下線部(イ)の黒色沈殿は何か。化学式を記しなさい。

問2 下線部(ロ)の濃硫酸の役割として最も適切な言葉を漢字2文字で答えなさい。

問3 下線部(ハ)の反応では気体が発生する。この気体の物質名と化学式を記しなさい。

問4 化合物Aは何か。物質名と構造式を記しなさい。

問5 化合物Bは何か。構造式を記しなさい。

問6 文中のXはいくつになるか。数字のみを答えなさい。

問7 下線部(ロ)の濃硫酸の代わりに同量の濃塩酸を用いて,その他の条件を変えずに同様の実験を行ったところ,得られた化合物Bは1.5X〔g〕より少なかった。この理由を60文字以内で答えなさい。

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